仁川市延寿区松島に事務所を構える行政書士(행정사、行政書類の作成や許認可の申請代行を行う専門家)です。仕事の中で出会ったひとつの出来事を記しておきます。
行政の世界では、時計がひとつだけということはめったにない。
免許の事件は特にそうだ。異議申立ての時計と、行政審判の時計は、それぞれ別々に動いている。ところが、多くの方がこれをひとつだと思っておられる。
だから、こんなことが起きる。異議申立てを出して結果を待つ。結果が出るまでに二か月かかる。その結果が思わしくなく、いざ行政審判をしようとすると、そちらの期間はもう過ぎている。
待ったことが間違いだったわけではない。時計が二つあることを知らなかっただけだ。

トラックがそのまま職場だった
依頼人は四十代後半の男性だった。一トントラックで早朝配送の仕事をしている。仁川と京畿道南部を回るルートで、八年目になる。
この仕事では、免許は資格証ではなく職場そのものだ。免許が停止されれば数日休むことになり、取り消されれば仕事を辞めることになる。
家族は妻と高校生の息子、そして中学生の娘。妻は介護職として働いている。トラックのローンはまだ二年残っていた。
事は会食の翌朝に起きた。前の晩、遅くまで酒席があり、明け方に起きていつものように車を運転した。本人は、寝たのだから大丈夫だと思っていたという。
取締りにかかったのは午前中だった。測定された数値は取消基準を超えていた。

三日をそのまま過ごしてから来られた
事務所に来られたのは、処分の通知を受けて三日目のことだった。
その三日間に何をされていたのか尋ねると、何もできなかったとおっしゃった。まず配送を代わってくれる人を探すのに二日を使い、残りの一日は妻にどう話すかを悩むのに使ったという。
この場面を書くのには理由がある。相談で出会う方の多くは、こうした数日を過ごしてから来られる。その数日は無駄ではない。人が悪い知らせを受け止めるのに必要な時間だ。
ただ、その間にも期間は減っていく。だから最初の相談で真っ先にすることは決まっている。日付を確認することだ。
今回は余裕があった。三日しか経っていなかったからだ。これほど早く来られるケースは、むしろ珍しい。

相談開始一分で確認する三つのこと
日付の次に確認するのが三つある。この三つが、この事件で進める道を決める。
一つ、血中アルコール濃度の数値。 二つ、人身被害の事故があったかどうか。 三つ、測定拒否や逃走、取締り警察官への暴行があったかどうか。
これにもう一つ加えて見る。最近五年以内に飲酒運転の前歴があるかどうかだ。
なぜこれを先に見るのかというと、異議申立てには減軽がまったくできない除外事由があるからだ。
飲酒運転で人身被害の交通事故を起こした場合、飲酒測定の要求に応じなかった場合、逃走した場合、取締り警察官に暴行した場合。こうした事由に一つでも当てはまれば、異議申立てで減軽を受けることは事実上期待しにくい。
この確認を飛ばして書類から作るとどうなるか。時間と費用をかけた後で「該当なし」だとわかる。そしてその間に、もう一方の期間が減っている。
依頼人の場合は、幸い事故がなかった。測定にも応じ、五年以内の飲酒運転の前歴もなかった。数値は取消基準を超えていたが、減軽の議論ができる範囲内だった。
だから、異議申立てを検討できる事件だった。

時計が二つある理由
ここで、先に述べた二つの時計についてご説明した。
異議申立ては、処分を受けた日から六十日以内に、住所地を管轄する市・道警察庁長に対して行う。運転免許行政処分異議審議委員会が審議・議決する仕組みだ。
行政審判は、処分があったことを知った日から九十日以内に請求する。運転免許の処分は警察側の処分なので、中央行政審判委員会が担当する。
重要なのは、この二つが別々のトラックだという点だ。異議申立てを受け付けたからといって、行政審判の期間が止まるわけではない。
これを知らないと、先に書いた落とし穴にそのまま落ちる。異議申立ての結果を待つうちに九十日を過ぎてしまうのだ。そうなると、残る道はより重いものしかない。
そのため実務では二つの方法のどちらかを選ぶ。並行して進めるか、除外事由に当たる事件であれば異議申立てを飛ばしてすぐ行政審判に進むか。
依頼人には並行を勧めた。減軽の議論ができる事件だったからだ。

執行停止が事実上の本番である理由
ここでもう一つお話しした。これを知らずに来られる方が本当に多い。
行政審判を請求したからといって、処分の効力が止まるわけではない。
つまり、審判を請求して結果を待つ間も、免許は取り消された状態のままだ。その間に運転すれば無免許運転になる。
そして裁決までには時間がかかる。法定の処理期間を超える事件も少なくない。数か月かかることもあるということだ。
ここで問題が表に出る。免許取消や営業停止のように、時間が経てば処分が事実上すべて執行されてしまう事件では、裁決で勝っても、すでに失ったものは取り戻せない。
そのため執行停止の申立ても一緒に出す。処分の効力や執行をしばらく止めてほしいという申立てだ。
実務で「執行停止が本番」と言われる理由はここにある。本案で争うことに劣らず、争っている間に生計を維持できるかどうかが、実際の暮らしではもっと大きい。
依頼人の場合、この点が特に重要だった。トラックのローンが二年残っており、数か月仕事を休めば、それ自体で別の問題が生じる状況だったからだ。

生計型なら自動的に軽くなるのか
依頼人が何度も尋ねられたことがある。インターネットで「生計型の運転者は減軽される」という記事をいくつも読んだとおっしゃった。
ここには正確な答えが必要だ。
生計型という事情が考慮されるのは確かだ。ただし、生計型だから自動的に減軽される仕組みではない。
審査で見る軸は利益衡量だ。違反の程度と、処分によって失う利益とを比べてみる。比例の原則と呼ばれる判断の仕方である。
つまり「運転で食べています」という一文が結果をつくるのではなく、その事情がどれだけ具体的に確認できるかが鍵になる。
同じことでも、こう変わる。
- 「私は運転で生計を立てています。」→ 主張だ。
- 「八年間同じルートの早朝配送をしてきて、事業者登録と取引関係、月別の運行記録はこうで、代わりの人員を確保できるか確認した結果はこうだ。」→ 資料だ。
私たちの仕事は、前の文を後ろの形に変えることだ。
そして一つだけははっきり申し上げた。どんな結果もお約束することはできない。この種の事件で請求が認められる割合は十件中二件前後という統計があり、それも取消が停止に変わる減軽を含めた数字だ。私はその数字を低くも高くも言わない。

二つの手続きは見る目が違う
並行すると決めた後、二つの書面を同じ内容では書かなかった。審査する機関が違い、見る目が違うからだ。
異議申立ての方は減軽基準に合わせて書く。除外事由に当たらないこと、そして減軽を検討するに値する事情があることを、基準の言葉で整理する。ここでは要件に合うかどうかが中心だ。
行政審判の方は、処分の違法・不当を争う構造だ。この事件のように違反事実そのものを争わない場合は、処分の程度が行き過ぎていないかを利益衡量の枠組みで書く。ここでは均衡が中心だ。
同じ資料を使っても、並べ方が変わる。異議申立書では除外事由の不存在を前に置き、審判請求書では失う利益の具体性を前に置いた。
二つの書面をコピーしてタイトルだけ変えて出すケースをたまに見る。そうすると、両方で焦点がぼやける。同じ事実でも、どこに出すかによって整理する順序が変わらなければならない。
依頼人には、この部分を表にしてお渡しした。左に異議申立て、右に行政審判。それぞれの期間、提出先、判断の軸、私たちが準備するもの。四行の表だった。
こうした表をつくるのは説明のためではない。依頼人が待っている間に不安になったとき、取り出して見るものが必要だからだ。

資料を三つに分けた
準備した資料は三つに分かれていた。
1) 処分の前提となる事実
取締りの経緯と測定結果に関する記録だ。この部分は争いにくい領域だった。数値が出た事件でその数値を揺るがそうとすると、書面全体の信頼が揺らぐ。
だからこの部分は争わなかった。事実は事実のとおりに書いた。争わないと決めることも判断だ。
2) 処分によって失う利益
ここに最も多くの時間を使った。
- 八年間の運行・取引関係を確認できる資料
- 車両のローン返済履歴
- 家族構成と扶養状況を確認できる書類
- 代わりの人員・代替手段を検討した結果
最後の項目を入れたのには理由がある。「仕事ができなくなる」という主張は、「ほかに方法がない」ことが確認されて初めて重みを持つ。代わりの方法を探したが、これこれの理由で難しかったという過程が必要だ。
3) 違反後の事情
事故なく取締りに応じた点、五年以内に同種の前歴がない点、そして処分以後、実際に運転していないという点だ。
最後の項目が意外に重要だ。処分を受けても運転を続けていた形跡があれば、その瞬間に別の事件になる。逆に、処分を守っているという事実は、それ自体が資料になる。

請求書に書かなかったこと
書面を書きながら、書かないと決めたことが三つあった。
第一に、取締りの過程への不満。 相談では取締り警察官の態度の話が出た。一行も入れなかった。事実確認が難しく、入れた瞬間に書面の性格が変わる。
第二に、悔しさの強調。 「一杯しか飲んでいない」「寝たのになぜ」という言葉は書面に書かなかった。こうした文は書けば書くほど、違反事実を争っているように読まれる。私たちが争うのは違反の有無ではなく、処分の程度だった。
第三に、結果への要求。 何級に、何日にしてほしいといった文は入れなかった。要求を書けば陳情になり、事実を書けば資料になる。
その代わり、冒頭の段落に結論を先に書いた。違反事実は争わず、処分によって失う利益は具体的にこうであり、その事情を確認できる資料を添付する、という趣旨だった。
依頼人は最初、このやり方を残念がられた。言いたいことがあるのに、なぜ書けないのかと。私はこう申し上げた。書面から抜けた言葉は消えるのではなく、残った文の重みになって返ってくると。

管轄を先に確定した理由
もう一つ確認した。この事件をどこが審理するのかだ。
行政審判は、処分をした機関がどこかによって審理する委員会が変わる。区長がした処分なら市・道の行政審判委員会へ、警察庁長や出入国側の処分なら中央行政審判委員会へ行く。
これを相談の初期に確定しなければならない理由がある。委員会ごとに処理の速さや運営の仕方が違うからだ。ここを取り違えると、依頼人に誤った期待を抱かせてしまう。
「数か月かかります」という案内は、行き先が決まって初めてできる言葉だ。それ以前の案内は推測にすぎない。
依頼人には、予想される流れとともに、その期間中にできることとしてはいけないことを紙一枚にまとめてお渡しした。特に「この期間にハンドルを握ってはいけない」という項目は太字で書いた。

よくある三つの誤解
このテーマで相談をしていると、ほぼ毎回出てくる誤解が三つある。
一つ、「異議申立てでだめなら、行政審判もだめだ」。
そうではない。二つの手続きは、判断する機関も、見る軸も違う。異議申立ては定められた減軽基準に合うかを見て、行政審判は処分の程度が均衡に合っているかを見る。一方でだめだったという事実が、もう一方の結論を決めるわけではない。
二つ、「とりあえず出しておけば、勝手に進む」。
受付は始まりであって終わりではない。補正の要請が来れば期限内に応じなければならないし、資料を追加するタイミングもある。受付だけして連絡に出なければ、準備したものがそのまま埋もれてしまう。
三つ、「取消でも停止でも、どうせ乗れないのは同じ」。
これは結果の重みをまったく誤解している。停止は期間が過ぎれば元の免許に戻る。取消は取り直さなければならず、その前に欠格期間を過ごさなければならない。トラックが職場である方にとっては、数か月と数年の差だ。
三つ目の誤解が特に危険なのには理由がある。「どうせ同じ」と思えば争わなくなるからだ。争わなければ、停止に調整される余地も一緒に消える。

越えなかった一線
この事件では二度、当事務所の仕事ではないと申し上げた。
一度目は刑事手続きだった。飲酒運転は行政処分とは別に刑事手続きが進む。二つの手続きが別々に進むこと、そして一方でした供述が他方で資料として現れうるので、双方の話が食い違ってはならないことだけをご案内した。
二度目は保険の方だった。事故がなかったので大きな争点ではなかったが、今後の保険料に関する質問が出た。この部分は保険会社に直接確認されるようご案内した。
私たちがした仕事の範囲は明確だった。減軽除外事由の確認、二つの手続きの期間設計、異議申立書と行政審判請求書・執行停止申立書の作成、疎明資料の収集と配列、そして進行期間中の注意事項のご案内。ここまでだ。
行政書士にできることとできないことの境界を先に引いておけば、依頼人が二度足を運ばずに済む。

待つ間に起きたこと
手続きが進む間に、二つのことがあった。
一つは良いほうだった。取引先の一社が事情を知って、席を空けておくと言ってくれた。この事実はそのまま資料になった。戻る場所が実際に存在するということは、処分によって失う利益が抽象的ではないということだからだ。
もう一つは苦しいほうだった。二か月目に入ると、家計が目に見えて苦しくなった。妻が勤務時間を増やし、息子が通っていた塾を一つやめたと聞いた。
依頼人はこの時期に一度電話をくださった。結果はいつ出るのか、そして少しの間なら大丈夫ではないか、という話だった。
その点だけは、きっぱりと申し上げた。これまで積み上げてきた資料のかなりの部分が「処分を守っている」という事実の上に立っている。それが崩れれば何も残らない、と。
その電話以来、その話が再び出ることはなかった。

結果
結果は、取消ではなく停止に調整される方向で決着した。停止期間は百十日だった。
依頼人が期待していたより短い結果ではなかった。百十日も長い時間だ。ただ、取消と停止の間には大きな違いがある。取消は試験を受け直さなければならず、欠格期間が伴う。停止は期間が過ぎれば元の免許に戻る。
請求から結論までの全期間は約四か月だった。
停止期間中、依頼人は配送の仕事を休み、別の仕事をされた。知人の倉庫で荷物の積み下ろしをしていたと聞いた。トラックは停めたまま、ローンは払い続けた。
期間が終わり、再びハンドルを握られた後、一度立ち寄ってくださった。その日おっしゃった言葉が記憶に残っている。明け方にエンジンをかけると手が震えたという。久しぶりだったからではなく、これを失うところだったのだと、そのときようやく実感したのだと。

ちょっとした騒動
笑うに笑えない出来事も一つあった。
書類を準備している途中、依頼人が運行記録の資料を持って来られる予定の日があった。その日の朝に電話が来た。資料をトラックの中に置いてきたのだが、トラックはいま整備工場にあるというのだ。
整備工場は開店前だった。結局、時間を午後に移し、その日の事務所には整備工場から出てきたばかりの油の匂いがしばらく残った。
ご本人は「車が私の代わりに仕事に行ってきた」とおっしゃった。
行政手続きは書類で回るが、その書類を持ってくるのは一人の人の一日だ。その一日がどんな形をしているかを知って日程を組めば、無駄足が減る。

書き残しておくいくつかのこと
こうした状況であれば、順序をこう組んでみてください。
① 時計が二つあることをまず知ってください。 異議申立ては処分を受けた日から六十日、行政審判は処分があったことを知った日から九十日です。異議申立てを出したからといって、行政審判の期間は止まりません。
② 減軽除外事由から確認してください。 人身被害事故、測定拒否、逃走、取締り警察官への暴行のうち一つでもあれば、異議申立てで減軽を期待するのは難しいです。この確認は書類作成より先です。
③ 執行停止を忘れないでください。 行政審判を請求しても、処分の効力はそのままです。免許取消・営業停止のように、時間が経てば処分がすべて執行される事件では、こちらが事実上の本番です。
④ 生計型という言葉だけでは足りません。 運行記録、取引関係、扶養状況、代替手段の検討結果のように、確認可能な資料に変えておく必要があります。
⑤ 手続きが進む間は処分を守ってください。 その事実自体が資料です。一度の例外が、それまで積み上げたものをすべて消してしまいます。
減軽の要件と手続きは、数値・前歴・事故の有無によって異なり、改正も頻繁なため、事案ごとに管轄機関への確認が必要です。
この記事は実際の相談事例をもとに再構成したもので、登場する人物・商号・地名・数値は特定の個人や事件とは関係ありません。

