仁川・延寿区の松島(ソンド)に事務所を構える行政書士(韓国)です。仕事の中で出会ったひとつのエピソードをご紹介します。
カレンダーに日付が二つ書き込まれていた。
ひとつは区役所が定めた補完期限だった。残りは十二日。もうひとつは銀行と結んだ施設資金約定書の書類提出期限だった。残りは二十六日。二つの日付のあいだに必要な書類は一枚だった。工場登録証明書である。
工場はすでに建ち上がっていた。使用承認も受け、プレスも稼働していた。ところが書類の上では、その工場はまだ登録されていない工場だった。理由はひとつの数字にあった。建てた建物が小さかったからではない。土地が広かったからだ。

十二年ぶりの移転
代表は四十代前半だった。板金とプレスで自動車部品のブラケットや補強材をつくる会社を経営していた。従業員は十四人。創業から十二年間、仁川郊外の賃借建物で操業してきた。建築物台帳上の用途は製造業所で、床面積は五百平方メートルにわずかに届かなかった。
その空間が限界に達したのは二年前だった。取引先が発注量を増やし、より大きなプレスが必要になった。大型プレスは床の耐荷重と天井高が合わなければ入らない。賃借建物では不可能だった。
代表は計画管理地域の土地を購入した。三千三百平方メートルあまり。畑と雑種地が混在する敷地だった。購入資金の一部は政策資金の施設資金融資で、残りは住んでいた自宅を担保にして用意した。建築費は別途融資を受けた。新工場が予定どおり登録され稼働してはじめて、これらすべての返済計画が成り立つ構造だった。
設計事務所が許認可を担当した。建築面積が五百平方メートルを超える工場だったため、工場設立承認を受けた。一つの承認で開発行為許可、農地転用、建築許可がまとめて処理される方式だった。事業計画には建物が二棟入っていた。第1段階の工場棟七百八十平方メートル、第2段階の倉庫棟四百二十平方メートル。
ところが工事が始まった後、鉄骨と人件費が値上がりした。代表は倉庫棟を後回しにした。工場棟だけを先に建て、倉庫は発注量が安定してから建てることにした。当時はそれが合理的な判断に見えた。その決定が登録段階で問題になると、誰も教えてはくれなかった。

自分で出した完了届出
工場棟は春に使用承認を受けた。設計事務所の契約範囲はそこまでだった。機械の設置が終わると、代表は工場設立の完了届出を自ら準備した。書式は区役所のウェブサイトにあり、添付書類もそれほど多くないように見えた。
届出は期限内に提出された。使用承認と機械設置を終えた日から五週間が過ぎた時点だった。ここまでは問題がなかった。
一週間後、区役所の企業担当部署から連絡が来た。補完要求だった。工場建築面積が基準工場面積に満たないという内容だった。補完期限は通知日から十五日。期限内に要件を整えられなければ届出は差し戻され、要件を整えた後にあらためて届け出る必要があるという案内が添えられていた。
代表は当初、これを書類の不備程度に受け止めた。設計事務所に電話した。設計事務所は、倉庫棟を建てれば解決すると答えた。倉庫棟は設計が終わっているので着工さえすればよい、と。問題は、着工から使用承認まで最低でも数か月かかること、そしてその工事費がないことだった。
代表は一人でもう一度試みた。区役所の担当者に電話し、倉庫棟の着工届だけでも先に出せば補完として認められるかと尋ねた。答えは明確だった。完了届出は実際に建てられた建築物を基準に審査する。着工計画は面積に算入されない。担当者は規定どおりに答え、その答えは間違っていなかった。ただ、その答えの次に何ができるのかは、電話一本でわかる内容ではなかった。
代表が取引銀行の担当者に事情を説明したとき、担当者は約定書の特約の一行を指し示した。融資実行後、定められた日までに工場登録を確認できる書類を提出すること。その担当者が、まず行政の側を当たってみるようにと、私どもの事務所を紹介してくれたのだという。

補完要求書の一行
電話で相談日程を決める際、補完要求書と工場設立承認書、承認当時の事業計画書を先に送ってほしいとお願いした。代表はその日の夜、スキャンしたものをメールで送ってきた。二日後の午前、予約の時間に代表が事務所に来た。そのとき私はすでに一度計算を終えていた。
補完要求書の要点は一行だった。基準工場面積率未達。
工場を建てる際には、敷地面積に対して工場建築物が一定の比率以上でなければならない。この比率が業種別に定められた基準工場面積率である。工場用地を必要以上に広く確保して遊ばせておくことを防ぐための仕組みだ。承認段階では事業計画書の建物面積でこの比率を見る。完了届出段階では実際に建てられた建物面積で改めて見る。
承認時の事業計画は二棟、千二百平方メートルだった。比率は余裕をもって満たしていた。完了届出時に建っていたのは一棟、七百八十平方メートルだった。敷地面積はそのまま三千三百平方メートル。逆算してみると、基準を満たすには建築面積があと百四十平方メートルあまり必要だった。
代表が尋ねた。では倉庫を建てるまで登録はできないのか、と。
そうではなかった。比率は分数である。分子を大きくできないなら、分母を見る番だった。

最初に広げた三つの道
最初の相談で、選択肢を三つに分けて書き出した。
第一に、倉庫棟を着工する道。最も確実だが最も遅い。工事費も今はない。補完期限の十二日はもちろん、融資書類の期限も過ぎてしまう。事実上除外だった。
第二に、既存の施設のうち工場建築面積に算入されるものがほかにないか確認する道。工場の構内には、キャノピーを掛けた資材置き場と小さなコンプレッサー室があった。こうした施設が算入されるかどうかは、施設の構造と用途、関連告示の算入範囲によって変わる。区役所の担当者に図面を送って確認を依頼した。回答は二日後に来た。コンプレッサー室はすでに算入済みで、キャノピーの資材置き場は本件の構造では認定範囲に入りにくいという意見だった。不足分を埋めるにはまったく足りなかった。
第三に、工場敷地の面積を減らす道。工場設立承認の敷地面積を変更し、当面使わない倉庫棟の予定地を工場敷地から切り離すのである。分母が小さくなれば、建てた建物だけで比率を満たせる。
第三の道が現実的だった。ただし、この道には一つ前提があった。切り離す土地が工場敷地としてすでに手が加えられた土地であれば、話が複雑になる。形質がすでに変わった土地を許可範囲から外すと、その土地の状態をどう説明するかが新たな問題として浮上するからだ。
そこで尋ねた。倉庫棟の場所は今どういう状態なのか、と。

手つかずの土地
代表は少し考えてから、工事を一度にやったので全部整地されているはずだと答えた。代表にとって敷地造成は一度きりの工事だった。掘削機が入って土地をならし擁壁を築くあいだ、どこまでが第1段階なのかを特に気にしてはいなかった。
確認が必要だった。土木施工会社に工程表と竣工図面、工事期間中に撮影した現場写真を依頼した。三日後に資料が届いた。
図面を重ねてみると、形が見えてきた。敷地造成工事は、工場棟と進入路、駐車場、雨水管路が入る範囲までしか行われていなかった。倉庫棟の予定地は、境界に仮排水路を掘ったほかは元の地形のままだった。工事費を抑えるため、施工会社が倉庫棟部分の整地工事を第2段階に回していたのである。代表はそのことを工程会議で聞いていたが、費用の話としてだけ記憶していた。
写真がそれを裏付けていた。倉庫棟の場所には、元の畑の痕跡と雑草がそのまま残っていた。工程表にも、倉庫棟敷地の整地は第2段階の項目として別に記載されていた。
この事実が第三の道を開いた。切り離す土地が形質変更前の状態であれば、工場敷地から除外する変更の説明は単純になる。その土地は工場敷地として使われたことがなく、将来倉庫棟を建てるときに改めて承認手続きを踏めばよい。
行政書類において最も強い根拠は、たいていすでにある書類である。違いは、誰がそれをどんな問いで読み直すかだ。

工場設立承認と工場登録、順序で見ると
ここで制度の骨格を一度確認しておこう。本件のもつれは、ほとんどが手続きの継ぎ目で生じたからだ。
「産業集積活性化及び工場設立に関する法律」第13条は、建築面積五百平方メートル以上の工場を新設・増設し、または業種を変更しようとする場合、市長・郡守・区庁長の承認を受けるよう定めている。着工前に受ける承認である。この承認を受ける際、関係部署との協議を経て、開発行為許可や農地転用など複数の許認可がまとめて処理されたものとみなされる。一般に「みなし(擬制)」と呼ばれる。
工場を建て終えたら、同法第15条に基づき完了届出を行う。期限は施行令で定められており、建築物の使用承認と機械・装置の設置を終えた後二か月以内である。完了届出が受理されると、官庁は工場を工場登録台帳に登載する。その後になって初めて工場登録証明書が発行される。
整理すると、流れはこうなる。工場設立承認、着工、使用承認、機械設置、完了届出、工場登録。小規模製造業者の多くは、前の二段階を設計事務所に、中間を施工会社に任せる。そして最後の二段階を自分でやろうとして行き詰まる。前段階の事業計画と後段階の実際の結果が食い違っているのに、その食い違いを最初に目にするのが代表本人だからである。
立地もあわせて見る必要がある。計画管理地域のように工場を建てられる用途地域であっても、業種や排出施設の種類によって立地が制限される場合がある。本件の業種は立地審査で問題がなかったが、敷地を購入する前に用途地域と業種制限、進入道路の要件を先に確認することが工場設立の第一歩である。土地を買った後に知ると、選択肢が急激に狭まる。
五百平方メートル未満の工場は承認の対象ではないが、申請すれば登録できる。調達の直接生産確認や政策資金の審査など、工場登録証明書を求められる場面が多いため、小規模事業者も登録の有無を前もって確認しておくほうがよい。要件と手続きは地域・業種・立地によって異なるため、案件ごとに所管部署への確認が必要である。

分割線をどこに引くか
第三の道に決めてから、最初に取り組んだのは分割線の位置を決めることだった。工場敷地から土地を切り離すには筆(地番)を分けなければならず、筆を分けるには測量が必要になる。測量は国土情報公社に申請する。問題は線をどこに引くかだった。
条件が三つ重なっていた。
一つ。残る工場敷地の面積が基準工場面積率を満たさなければならない。七百八十平方メートルを基準面積率で割ると、工場敷地の上限が出る。計算すると二千七百平方メートルあまりが限界だった。切り離すべき面積は六百平方メートル前後。
二つ。切り離した土地が袋地(道路に接していない土地)になってはならない。倉庫棟の予定地は敷地の奥にあった。線を誤って引くと、その土地は道路に接しない土地になる。数年後に倉庫を建てようとするとき、進入路の問題で再び行き詰まる。切り離した土地が既存の進入路に接するよう、線の形を決める必要があった。
三つ。すでに敷設された雨水管路と擁壁が、工場敷地内にそっくり残らなければならない。管路が分割線をまたぐと、工場敷地の排水施設が別の筆を通ることになる。後々どちらにとっても問題になる。
設計事務所の図面の上に三つの条件を重ねて線を引いた。第一案は袋地の条件に引っかかった。第二案は雨水管路の一区間が線をまたいだ。第三案で三つの条件がすべて合った。切り離した後の工場敷地は二千七百平方メートルをわずかに下回った。基準面積率を満たしたうえでの余裕は二十平方メートルあまり。潤沢とは言えないが、十分だった。
測量を申請する前に、この案を設計事務所と土木施工会社に送り、図面上問題がないか確認してもらった。測量は一度行うと後戻りが難しい。線を先に確定させてから測量を呼ぶのが順序だった。

四つの機関の順序
次は順序だった。この変更には複数の部署が絡んでいた。工場設立承認を担当する企業部署、みなし処理された開発行為許可を所管する都市計画部署、分割を処理する地籍部署、そして測量を担う国土情報公社。
どれを先にするかによって、期間が二倍に延びかねなかった。分割を先にすると、変更承認が出る前に筆が変わり、承認書の地番と実際の地番が食い違う。変更承認を先にすると図面だけで敷地面積を変えることになるが、確定した測量成果なしに担当部署が面積を確定してくれるかは不確かだった。
そこで順序を決める前に、企業部署に事前協議を申し入れた。分割線の案と土木図面、倉庫棟敷地が未着工の状態であることを示す写真を持参した。協議で確認された本件の順序はこうだった。分割測量で成果図を先に受け取る。その成果図を添付して工場設立変更承認を申請する。変更承認の過程で、都市計画部署が開発行為許可の変更をあわせて協議する。変更承認が出たら分割を申請する。分割が終わったら完了届出の補完書類を提出する。
協議の場で、担当者のほうから先に尋ねてきたこともあった。敷地が小さくなっても、元の承認条件として付されていた緑化面積と駐車スペースが引き続き工場敷地内に確保されるのか、という点だった。予想していた質問だった。使用承認図面から緑化区画と駐車区画の位置をあらかじめ抜き出し、新しい分割線の内側にすべて収まることを一枚に示して持参していた。切り離す土地に承認条件の一部がかかっていたなら、分割線を引き直さなければならなかっただろう。
この順序どおりに進めると、最も長い区間は測量の待ち時間と変更承認の処理期間だった。補完期限の十二日以内には到底終わらない日程だった。

二つの期限への向き合い方
まず補完期限から手をつけた。期限内に要件を完成させられないのなら、期限内にできることを先にやる必要があった。
測量申請の受付証を受け取った日、企業部署に補完期間の延長を書面で要請した。要請書には三点を記載した。補完要求の理由を解消するため工場敷地面積の変更を進めていること。事前協議で確認した手続きの順序と各段階の見込み所要期間。測量申請受付証の写し。漠然ともっと時間がほしいという要請と、すでに手続きが動いていることを示す要請とでは、受け止められ方が違う。
延長は認められた。担当者は、変更承認の申請が受け付けられたら知らせてほしいと言った。新しい期限は元の期限より一か月近く後だった。
融資約定書の期限は性格が異なった。これは行政手続きではなく金融契約である。契約条件の協議は代表と銀行のあいだの話だ。ただ、銀行が判断するための資料は行政の側で用意することができた。
代表のために、銀行提出用の経過説明書を一枚にまとめた。工場はすでに使用承認と機械設置を終えて稼働中であること。完了届出は法定期限内に受け付けられていること。補完理由は敷地面積の調整で解消可能であり、所管部署と手続きの順序を協議済みであること。段階別の見込み日程と工場登録の予定時期。添付として、完了届出の受付記録、補完期間延長の承認文書、測量受付証を付けた。
代表がこの書類を持って銀行へ行き、銀行は提出期限を一度調整してくれた。調整後の日付は、私たちが組んだ日程の最終日より十日後だった。余裕と呼ぶには狭かったが、日程が狂わなければ届く距離だった。

測量日のパレット
測量の日の朝、ちょっとした騒ぎがあった。
国土情報公社の測量チームが現場に到着し、分割線の位置に境界点を打とうとしたところ、その場所に鋼板資材を載せたパレットが十数枚積み上げられていた。工場の班長が倉庫棟予定地を臨時の資材置き場として使っていたのである。倉庫がないのだから、いちばん近い空き地に積んでおくのは班長にとって当然の選択だった。
測量技師が機械を据えたまま待つあいだ、班長がフォークリフトを運転して出てきた。パレットを一列ずつ移すたびに、測量技師がもう少し、もう少しと手招きした。パレットがすべて片付くと、班長はフォークリフトから降りて、この土地は工場でなくなるということかと尋ねた。代表が少し間を置いてそうだと答えると、班長は、じゃあ資材はどこに置くのかと聞き返した。その日の昼頃、工場内側の壁面に資材棚のスペースが新たにできた。
笑って済ませられる出来事だったが、一つだけ念を押しておいた。工場敷地から除外される土地に工場の資材を積み続ければ、書類と現場がまた食い違う。変更承認の前後に担当部署が現場を確認する可能性もあった。代表はその週のうちに、資材の置き場所をすべて工場敷地内に移した。

都市計画部署が尋ねるであろうこと
測量成果図が出ると、工場設立変更承認を申請した。申請書を書く前に、もう一つ準備をした。都市計画部署が開発行為許可の変更を協議する際に尋ねるであろう質問を、あらかじめ想定しておくことだった。
開発行為許可を所管する部署の関心は、たいてい決まっている。切り離した土地は今後どうなるのか。既存の許可を受けた基盤施設、特に排水は変更後も適切に機能するのか。切り離した土地が放置されたり、無断で形質が変更されたりする余地はないか。
そこで変更事業計画書に三つの段落を追加した。第一に、除外敷地は形質変更前の状態で残っており、工事写真と工程表でそれを確認できること。第二に、雨水管路と擁壁はすべて変更後の工場敷地内にあり、除外敷地の雨水は元の地形どおりに流れて工場敷地の排水系統と混ざらないこと。土木施工会社が確認した排水系統図を添付した。第三に、除外敷地に倉庫棟を建てる際には、別途工場増設承認の手続きを踏むという計画。
予想は半分ほど当たった。都市計画部署の協議意見は二点だった。除外敷地の仮排水路を整理すること、そして除外敷地を将来開発する際には別途許可を受けること。どちらもすでに事業計画書に答えが盛り込まれている内容だった。追加の補完要求なしに協議は終わった。
質問が来る前に答えを書類に入れておけば、やり取りが一往復減る。行政手続きにおける一往復は、たいてい一週間である。

設備リストの一行
変更承認の申請書を出す直前、もう一つ食い違いを見つけた。承認当時の事業計画書にある機械・設備リストだった。
リストには大型プレスが二台載っていた。実際に工場に入っているのは一台だった。残る一台は海外メーカーの納期が遅れ、数か月後に入る予定だった。代わりに、リストになかった中型のベンディングマシン(折り曲げ機)が一台先に入っていた。
代表は、最初に完了届出書を書いたとき、この部分を承認リストのとおりに書き写したという。企業部署の最初の補完要求は面積率だけを指摘していたが、面積の問題が解決した後、設備リストが二つ目の補完理由になる可能性があった。再届出でまた止まれば、銀行と調整した日付を過ぎてしまう。
そこで変更承認の申請に、設備リストの整理もあわせて盛り込んだ。現在設置されている設備と今後搬入予定の設備を区分して記載し、ベンディングマシンを追加した。搬入予定のプレスは、入った後に別途変更手続きを踏むことで整理した。一度の申請で、判明している食い違いをすべて解消することが目標だった。
規定を読むこと自体は難しくない。どの規定が二番目に問題になるかを先回りして読むことが難しいのだ。

工場登録証明書が出た日
変更承認は、申請から三週間あまりで出た。承認書の工場敷地面積は減っていた。すぐに地籍部署へ分割を申請し、一週間後に新しい地番が付いた。
完了届出の補完書類は、延長された期限を八日残して提出した。変更承認書、分割後の土地関係書類、整理した設備リスト、工場建築物の現況。今回は補完要求が来なかった。届出が受理され、工場が工場登録台帳に登載された。
工場登録証明書の発行を受けた日、代表はその場で銀行の担当者に写真を送った。原本は翌日の午前に銀行へ提出した。調整後の期限より六日早かった。
同じ週には、取引先による協力会社監査もあった。取引先は、新工場で生産する品目を正式に登録する前に、生産場所が登録された工場かどうかを確認する手続きを設けていた。代表は監査担当者に工場登録証明書の写しを手渡した。新規品目の数量契約は、その監査の後に続いた。登録証明書一枚が、融資と取引という二つの扉を同時に開いた。
残った作業がいくつかあった。工場敷地として使う筆は、地目を工場用地に変更しなければならない。地目変更は事由が生じた日から定められた期間内に申請する義務があるため、その日程を代表のカレンダーに書き込んでおいた。

残した土地の次の計画
切り離した六百平方メートルは、今も代表の土地である。ただ、もう工場敷地ではない。倉庫棟を建てる余力ができたら、そのときに改めて工場増設承認を受ければよい。分割線を引く際に進入路に接するよう線を決めておいたのは、その日のための備えだった。
振り返れば、本件の根は単純だった。事業計画を二棟で立て、一棟だけを建てた。工事の途中で計画を縮小するのはよくあることだ。珍しいのは、その変更が登録段階の数字にどう影響するかを着工前に検討することである。倉庫棟を後回しにすると決めたその時点で敷地面積と面積率を一度計算していれば、変更承認を工事中に前もって受けておくことができた。そうしていれば、完了届出は一度で済んだはずだ。
だからといって、代表の判断が間違っていたわけではない。費用が上がるときに工事を分けるのは経営判断である。行政とは、その判断を書類に合わせて書き写す仕事だ。二つが同じ速度で動かないとき、隙間が生まれる。
三か月ほどして、代表から短い便りが届いた。二台目のプレスが入って変更手続きを終え、取引先の新規品目の受注が始まったという。十四人だった従業員は十六人になった。自宅を担保にした融資の返済日程も、当初の計画どおりに回っていた。
工場は最初からそこにあった。書類がその工場に追いつくまでに二か月かかった。

工場を建てる前に確認すべきこと
工場の新設や増設を控えているなら、以下をまず点検してみてください。
① 建築面積五百平方メートルが基準線です。 これ以上であれば着工前に工場設立承認が必要で、それ未満でも申請すれば工場登録を受けられます。調達・政策資金などで工場登録証明書が求められるか、事前に確認してください。
② 事業計画を縮小するなら、まず面積率を計算し直してください。 建物の一部を後回しにすると、完了届出の際に基準工場面積率に引っかかることがあります。工事中に敷地面積や建築計画の変更承認を先に受けておくほうが早道です。
③ 完了届出の期限は二か月です。 使用承認と機械設置を終えた日から起算されます。届出書には、承認内容と異なる設備・面積を漏れなく反映させてこそ、再補完を避けられます。
④ 敷地を分けるなら、袋地と排水をまず確認してください。 切り離した土地が道路に接しているか、既存の排水施設が工場敷地内にそっくり残るかが、次の許認可を左右します。
⑤ 金融約定の書類期限と行政の日程を並べて逆算してください。 行政手続きの経過を示す書類があってこそ、金融機関と日程調整を協議できます。
工場設立承認と登録の要件は、立地・業種・地域によって異なり、所管部署の判断によっても変わり得ます。案件ごとに要件が異なるため、個別の確認が必要です。
本記事は実際の相談事例をもとに再構成したもので、登場する人物・商号・地名・数値は特定の個人や事件とは関係ありません。

