3行要約
- 革新製品の指定は出発点に過ぎません。 需要機関は革新市場(イノベーションマーケット)に掲載された情報と添付書類を見て、試行使用・購入の可否を内部決裁で判断するため、この情報が不足していれば、指定製品であっても選ばれることは困難です。
- 需要調査の前に整えるべき書類4つ:①指定書と市場登録情報の一致(モデル名・指定範囲)②価格算定の根拠 ③設置条件・納品可能数量 ④保守・アフターケア確認書。
- 期限:需要調査のスケジュールは毎年、公示ごとに異なります。公示が出た後に修正すると遅れることが多いため、公示の2〜3週間前に市場情報を先に点検するのが安全です。
目次
- 10月が近づくと変わる調達の問い合わせ
- 指定書を受け取っても3ヶ月間注文がなかった理由
- 革新製品の指定と需要調査はどう繋がるのか
- 需要調査の前に準備すべき書類4つ
- 指定書と市場情報が食い違った一行
- 需要機関の担当者が決裁を上げられるように書き直した資料
- 受付締め切りとその後の結果
- 行政士事務所の業務内容と実務チェックリスト
1. 10月が近づくと変わる調達の問い合わせ
仁川(Incheon)の松島に事務所を構える行政士です。仕事の中で出会ったあるエピソードをご紹介します。
9月下旬になると、調達に関する問い合わせの性質が少し変わります。春と夏には「ナランチョン(国家調達システム)への登録はどうすればいいですか」「直接生産確認はいつ受けられますか」といった入門的な質問が多いです。秋に入ると「すでに指定を受けたのに、なぜ連絡がないのですか」という質問が増えます。これは、公的機関が翌年の予算と試行使用計画を立てる時期と重なるためです。
その年の9月第3週に受け取ったメールも、そのような内容でした。仁川の南洞産業団地で従業員9名を抱える電子機器メーカーでした。代表は30代後半の女性で、大企業の研究所でセンサー設計をしていたところを辞め、会社を設立して5年目でした。主力製品は地下道や河川沿いの散歩道に設置する浸水検知センサーでした。水が一定の高さに達すると管理者に信号を送り、現場の警告灯を点灯させる装置です。
この会社は政府の研究開発課題として3年間製品を磨り上げ、その年の6月に革新製品として指定を受けました。課題期間中に受け取った資金の一部は融資であり、返済が今年の冬から始まる予定でした。従業員9人の給与を考えれば、指定後の最初の公的納品がいつ来るかが、会社のスケジュール全体を左右する状況でした。
メールの最後の一行は短く、こう書かれていました。「指定を受ければ、機関から連絡が来るものと思っていました。3ヶ月経っても一件もありません。」

2. 指定書を受け取っても3ヶ月間注文がなかった理由
予約した木曜日の午後、代表は指定書の写しと革新市場の画面キャプチャ、そしてこれまでやり取りがあった地方自治体の担当者とのメールを印刷して持ってきました。
夏の集中豪雨の後に関心を示した機関は3つありました。2つは区庁の災難安全部署、1つは公共施設を管理する公団でした。3か所とも最初の電話では反応が良かったと話していました。しかし、数週間後に返ってきた答えは似通っていました。
- 「内部検討資料が不足しており、決裁を上げるのが難しいです。」
- 「市場にある価格に設置費が含まれているか分かりません。」
- 「10月の需要調査の際に改めて検討します。」
代表はこれらの回答を拒絶と受け取っていました。私はメールを読み返しながら、違った見方をするようになりました。3つの機関すべて、製品が嫌だとは言っていません。 判断するための資料がないと言っているのです。
公的機関の担当者は、製品を直接買う人ではなく、なぜこの製品をこの価格で使うべきかを文書で説明して決裁を受ける人です。革新製品は通常の入札とは異なる購入ルートが開かれていますが、そのルートを使うためには担当者の手元に根拠となる書類が必要です。市場の画面がその役割を果たせていなかったのです。
その日、私は代表に3つのことをまず確認すると伝えました。指定書に記載された製品範囲、市場に登録された情報、そしてこの秋の需要調査のスケジュールです。

3. 革新製品の指定と需要調査はどのように繋がるのか
ここでよくある誤解を一つ指摘しておきます。革新製品に指定されれば、調達庁が自ら売ってくれると考える方が多くいます。 指定とは、公共機関がこの製品を革新製品の購入経路として購入できるよう、門を開けてくれる手続きのことです。門を開けるからといって、機関が(自ら)入ってくるわけではありません。
革新製品の手順は通常、4つの段階で進みます。
- 指定: 政府の研究開発成果、調達庁の革新試作品公募、技術開発製品など、経路別の要件に従って革新製品として指定されます。指定のタイプごとに有効期間と要件が異なります。
- 革新市場(イノベーションマーケット)登録: 指定された製品の情報が革新市場に掲載されます。需要機関の担当者は、主にこの画面と添付書類を見て製品を比較します。
- 需要調査: 調達庁の試行購入事業のように、機関がどのような革新製品を試行使用したいか申請を受ける手続きが、定められた期間に開かれます。この期間に機関が当方の製品を選ばなければ、次の段階へ進むことはできません。
- マッチング・購入: 需要機関の申請と審査を経て試行使用機関が決まり、納品と使用、使用結果の評価へと続きます。
この依頼人は、第1段階を終え、第2段階も終わったと思っていました。実際には第2段階は半分しか終わっておらず、第3段階のスケジュールが迫っていました。
需要調査の期間は、毎年、事業ごとに異なります。今回の案件で確認した公告は、10月中旬に需要機関の申請を受け付け始め、約3週間開かれていました。機関の担当者がその期間内に内部決裁まで済ませなければならないため、企業側の資料はそれよりも前に整っていなければなりませんでした。残された時間は3週間ほどでした。
革新製品の購入支援に関する根拠は「調達事業に関する法律」および関連告示にあり、詳細な基準は改正が頻繁です。案件ごとに個別の確認が必要です。

4. 需要調査の前に準備すべき書類4つ
市場の情報とメールの内容を照らし合わせた後、今回補完する資料を4つの束に分けました。機関の担当者が決裁文書に添付できる形態でなければならないという基準を設けました。
① 指定書と市場登録情報の整合性確認
- モデル名、規格、構成部品が指定書の文言と一致しているか
- 指定範囲外の品目が一緒にまとめられていないか
② 価格算定根拠書
- 本体単価と設置費、通信費、保守費用を分けて表示
- 民間への納品実績や見積と比較して説明できる根拠
③ 設置条件書と納品可能数量
- 電源・通信環境、設置場所別の要求条件
- 月別の生産可能数量と納期
④ メンテナンス・アフターケア確認書
- 無償保証期間、障害対応時間、部品供給期間
- 試行使用期間中の性能確認方法
これら4つはすべて新しく作る書類というよりは、社内に散らばっていた内容を、機関が読む順序で改めてまとめる作業でした。しかし、①の項目で予想していなかった問題が一つ発生しました。

5. 指定書と市場情報の齟齬がある一行
指定書を一行ずつ読み進めていたところ、製品範囲の欄で手が止まりました。指定されていたのは「水位検知センサー本体および管理ソフトウェア」でした。しかし、市場に掲載されている製品写真と説明には、地下道入り口用の自動進入遮断警報機まで一セットとしてまとめられており、価格もセット価格の一つだけが記載されていました。
代表に尋ねました。遮断警報機は研究開発課題の成果物だったのか。答えは「いいえ」でした。遮断機は協力企業から仕入れて連携させるだけの装置であり、営業資料を作成する際にセットで見せた方が理解しやすいため、一緒に掲載したのだとのことでした。
これが、機関の担当者が躊躇した理由の一つでした。革新製品の購入経路は、指定された製品に対して開かれるものです。指定範囲外の機器が混ざったセット価格を前に、担当者がどこまでを革新製品とみなして決裁すべきか判断しにくくなります。監査で問題になる可能性のある構造を、担当者があらかじめ避けたのです。
もう一つはモデル名でした。試験成績書と指定書には、課題当時の試作品の名前が書かれており、市場とカタログには発売後に付けた販売用の名前が使われていました。同じ製品であることを会社は知っていますが、初めて見る担当者は分かりません。
方向性は三つに定めました。
- 市場情報をセンサー本体とソフトウェア中心に修正し、遮断警報機は「連携可能機器」として別途記載し、別個の購入対象であることを明らかにします。
- 試作品名と販売名が同じ製品であることを示すモデル名対照表を作成し、回路構成とファームウェアのバージョンが同じであるという会社の確認書を添付します。
- 市場情報の修正が指定内容の変更に該当するか、調達庁の担当部署に書面で照会します。電話での回答は人によって異なる可能性があるため、記録が残る方法を選びました。
照会の回答は6日後に届きました。指定範囲内での登録情報を修正することは「情報の修正」として処理でき、指定範囲を広げる場合は別途の手続きが必要であるという内容でした。この回答のおかげで、修正すべき範囲が明確になりました。

6. 需要機関の担当者が決裁を上げられるように書き直した資料
次は価格の根拠でした。従来の市場価格はセット単価の一つだけで、設置費や通信費が含まれているかどうかが記載されていませんでした。担当者が「設置費が含まれているか分からない」と言ったのもこのためでした。
会社の経理担当者と共に、過去2年間の民間現場への納品見積もり11件を取り出しました。その中から、設置環境が公共施設と似ている5件を選び、本体・設置・通信・保守の4つの項目に分けて書き直しました。平均を出して市場価格と比較したところ、本体の価格は民間納品価格と大きな差はありませんでした。担当者が「高い」と感じた理由は、遮断機と設置費が一つの数字に混ざっていたためでした。
設置条件書は現場の写真を中心に作成しました。地下道型と河川散策路型の二つに分け、電源確保の方法と通信方式、設置にかかる時間をそれぞれ一ページずつ整理しました。担当者が現場を思い浮かべながら読めるようにしたのです。
その週の火曜日、代表が試用用のセンサーを事務所に持ってきたことがあります。設置の高さの説明をしながら、テーブルの上のコップにセンサーの先端を軽く浸したところ、その瞬間、警光灯が点灯し、私の携帯電話に警告メッセージが届きました。隣の部屋から何事かとドアをノックされました。代表は笑いながら「反応速度はこれで証明されたようですね」と言い、そのメッセージの画面は実際に試用使用計画書の通知例の写真として採用されました。
最後に、試用使用計画書草案を添付しました。機関が試用を申請する際、どのような指標で性能を確認すればよいか、例えば検知精度や警報送信時間、障害発生回数などの項目をあらかじめ提案しておくための文書です。担当者が最初から基準を作る必要がなければ、決裁のスピードが変わります。

7. 受付締め切りとその後の結果
市場情報の修正は、需要調査開始の9日前に反映されました。代表は修正された画面と4つの書類の束を1つのPDFにまとめ、夏に連絡を取った3つの機関の担当者に再送しました。今回は「検討してください」ではなく、需要調査のスケジュールと共に、どの部分を修正したのかを3行で記したメールでした。
結果は機関ごとに異なりました。
- 区庁の1か所は、需要調査期間の第2週に試用申請書を提出したとの連絡がありました。
- 公団は内部検討を終えたものの、今年は他の事業と予算が重なり来年の需要調査の際に申請すると回答しました。
- 残りの区庁の1か所は、設置場所の協議が終わっていないため、今回は申請しませんでした。
1か所であれば少ないと感じるかもしれません。しかし、3ヶ月間一度もなかった会社にとっては、最初の公的機関への申請でした。その後、審査を経て試用機関としてマッチングされたという知らせは、その年の末に届きました。設置は翌年の梅雨前に行うことになり、代表はそのスケジュールに合わせて生産計画を再構築しました。
振り返ってみれば、問題を解決したのは新しい書類よりも、指定書の1行を正確に読んだことでした。指定範囲外の機器を取り除いたことで価格が整理され、価格が整理されると担当者が決裁文書を書くことができるようになったのです。調達書類は、多く出すことよりも、互いに矛盾がないように出すことの方が難しいのです。

8. 行政士事務所の業務内容と実務チェックリスト
革新製品や公共調達に関する業務において、黄允相(ファン・ユンサン)行政士事務所は以下の業務を遂行します。
- 革新製品指定書と革新市場登録情報、試験成績書の一致の有無の検討および対照表の作成
- 価格算定根拠書、設置条件書、保守確認書、試用計画書など提出書類の作成
- 調達庁・需要機関に送る書面質疑書の作成および回答内容の検討
- ナラジャンター(Narajangter)競争入札参加資格登録、直接生産確認申請など調達登録書類の作成および提出代行
革新製品の指定を受けたにもかかわらず、公的機関からの反応がない場合は、以下の項目から点検してみてください。
- 指定書の製品範囲と、市場に掲載した構成品は同じですか?
- 試験成績書・指定書・カタログのモデル名は同じですか?異なる場合、対照表はありますか?
- 市場価格に設置費・通信費・保守費が含まれているか、分けて記載していますか?
- 需要機関が性能を確認するための試用指標を事前に提案しましたか?
- 今年の需要調査公告スケジュールを確認し、それよりも2〜3週間前に資料を整えましたか?
仁川・松島で調達や革新製品の問題で悩んでいる方であれば、公告が出る前に書類を一度確認しておくことをお勧めします。
理解を助けるために構成した物語です。

